第二章(六)『陰陽五行思想』

 

 

 

この印面九文字「日界・月界・太上老君勅」を黒川先生に解読戴いた時、先生が“これ以

上の無い最高の文言”と語気を強めて漏らされた言葉の意味は当初分かる筈もありません

でした。

「日界・月界」は陰陽思想を(あん)()すこと位は分ります。

しかし中央「太上老君勅」の五文字に“五行思想”が隠されてある事など、当初は考えも

及びませんでした。

『大漢和辞典』によると漢字の「漢」の語訳は“天の川”とあります。

私は、四辺に囲まれた印面は天子皇帝の天下である事は、何となく分かっていました。

天子とは天の子です。

印面には漢字が彫りこんであります。

その漢字が天の川の銀河であるなら、印面の文字、一文字一文字が星となります。

であるなら、この印面は漢大宇宙となります。

『大漢和辞典』の漢字は約5万字です。

そして中国の言葉は数百万ともいわれます。

しかも個々の漢字は象形推移も勘案するとその五倍はあると想像されます。

重ねて「太極」とは「太」が無限大、「極」は極限です。

「太」と「極」が一つになった宇宙の状態です。

その5万字と数百万の言葉の組み合わせは無限大「太」と言ってさしつかえありません。

しかし印面は()りすぐられた究極の九文字で、極限の「極」です。

即ちこの印面「九文字」は大極宇宙を漢字で天刻(篆刻)した天の子「天子」皇帝の天下、

宇宙と推論したのです。

重ねて印面は九文字です。

「九」と言う数字は「易」では“陽の極”でこれ以上ない、無限大の数位です。

五重の搭の最上部、テッペンは九輪の搭で、それ以上は天上界です。

また八重(やえ)九重(ここのえ)、九十九里浜に(たと)えられるように「九」数位はこれ以上の無い、無限の

数位を意味します。

私は印面を()つめながら、印面の向こう側に広がる漢大宇宙の銀河を観ていたのです。

そしてこの究極の星座にはもっと隠された秘密が天隠されてあると“気”で感じたのです。

これは謎の天才宗師がこの九文字に魔法をかけ隠したのであろうと・・・・・

天に隠した・・・・これは天隠であろうと・・・・・・

映画の、魔宮の伝説、インディージョーンズの世界だと・・・・・・

                                                          平成1931