第九章()     『日本の「寶」』

 

 

 

漢文化の太極「寶」降臨を記念して一筆啓上させていただきます。

安倍総理が「美しい国、日本」を標榜されておられます。

今日、総理が掲げなければならないほど美しかった日本の国体の構えが十分に体をなしておりません。

改めて国民の一人一人を、あまねく照らし、その余りの偉大な光のために、その光の中で生かされて

いることを平素は、ほとんど気付かずに生きている日本民族の太極「寶」、その国体の基を改めて確


する次第であります。

道元禅師が“春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬は雪冴えて涼しかりけり”と詠んだ大和の国です。

四海を海に囲まれた美しい国、それが日本です。

大きくは四島から成る。その本州中央に聳える“富士の山”は、日本人の心の拠り所です。

叉、日本を象徴する清楚な“菊の花”と共に、“桜の花”が春には南の島々から、北の端まで北上し、

全ての人に等しく
春を告げます。

暖流と寒流は豊富な“海の幸”を恵み、この山河に恵まれた国土は縁に覆われ、実りの秋には豊かな

“山の幸”を恵んでくれます。

“春夏秋冬”の色合いは鮮明で、それでいて穏やかに、時に厳しく大自然のパノラマを織りなし、程よい

“湿度”を含んだ気候と変化に富んだ四季は、絶妙の色合いを奏でます。

この四方を海に囲まれ、地勢学的大いなる恩恵をうけ、勤勉で多感・柔和、好奇心に富み、情感豊かな

民族性が育まれました。

古来この国を「大和の国」・「大」いなる「和」の「国」と称したゆえんです。

また大陸との“絶妙な距離’’は民族の自尊自立を保ち、思考の「間」を生み、近代まで政治・経済・文化の

あらゆる事柄を取捨選択し、民族合意のもと、独自の文化を醸成してきました。

この地勢学的風土に育まれた日本人は、先に述べた通り、元来異民族との戦争を好まぬ「和」の国でしたが、

それでも長い歴史の過程で、幾度かの悲しい歴
史もありました。

明治維新の開国により立ち遅れた近代化を計るべく現代に至る歩みの中で、国家的純粋性が民族の短所と化し、

結果として諸外国に
対しても、また自らも大きな苦痛を味わう痛恨の歴史を記しました。

そのため戦後50年、平和国家として他国にとなる、涙ぐましい努力を積み重ねて来たことは、承知の通りです。

この気候風土に育まれた勤勉で豊かな感性を持つ大和の民族は、この太極「寶」が隣国中国で創造される遥か以前より、

北から、南から、
人とあらゆる文化を取り入れてきました。

そして土着の自然信仰や民族観など、固有の文化と融合させ、それを醸造発展させ、文化の原形を形成して来ました。

明治新政府以来、近代欧米のあらゆる先進技術を、東南アジアなどの発展途上国に先駆け、東洋の奇跡と言われる

驚異的期間で吸収し、自ら
の文化となしさらにそれを変様させ格段に次元を高め、逆に世界に還流したその原動力は、

それ以前から世界に誇る文化的下地があったからあります。

寺小屋などに見られる様に、当時も教育的裾野は広く身分を越えて世界のトップ水準でありました。

「古事記」や「日本書記」を書き著す遥か昔、太古と呼ぶに相応しい時代より、大和民族の王、現在の象徴『天皇』

の遥か以前から<、民族の融和を自然に計り、文化的下地はすでに、地勢学的風
土によって育まれ自然に備わっていたのです。

その当時より大陸の文化を理解・吸収・分別すべく、深い潜在能力を有し、自らの裾野の広い文明を誇っていたのです。

奈良時代も明治維新も、そして廃墟から立ち上がった時も、時代の先進文化を受容する地下水脈は、民族の遥か太古の

源流より溢れんばかりに流れていたのであります。

この受容精製し次元を各段に高めた文化の象徴、それが太極『天皇』であります。

正に体内深く秘めた、民族文化の“DNA”とも言うべき「寶」です。

ご存じの通り日本は資源に恵まれず、あるのは豊かな水と勤勉な人的資源くらいです。

この民族が諸外国から、資源や技術・文化を輸入し精製し、より高め再び世界に還流して国家を営んでいるのであります。

人的資源くらいしかない”無”の国が、高い質を“有”する文化を生み出し、世界に還流する「道」の実践国です。

世界の文化に大きく貢献し、有益かつ無くてなら無い国です。

剣道・相撲道・華道・茶道・柔道などの文化を見ても、正しく“道”を体現してきた国です。

日本人は多様な文化の中に崇高な精神世界を希求する民族です。

世界中の国々が、羨望と尊敬の念で憧れる象徴「天皇」は今や世界文化の遺産でもあり、日本民族永遠の「寶」です。

果てしない歴史の中で、今日の偉大な文明を造り上げた大和民族の弛まぬ努力の結晶は、ひとえに民族の象徴『天皇』

の元、一致協力し“和”をもって尊んできた賜物です。

もはや1300年前、この偉大な「寶」の神知は、大和の国の「寶」の中に、太古よりの固有の文化と溶け合って、なにごとも

無かったかの如くとこしえに我々の精神世界の中心に星座
し、国民を見守って戴いているのです。

近年、国家としての道を失い、道理は乱れ、「美しい日本」の国体の構えを喪失しています

その日本国の道理を正さんと「寶」は、まさに平成の御世に降臨したのであります。

平成承禎       平成19315