深まる秋
あの記録的猛暑がウソのような、今日この頃である
終の住かと観念している獅子窟庵で、猛暑が去るのをジッと堪えていたのが、今年見た映
画と同じように風化してゆく
過去はドンドン速度を増して、一週間も経たないうちに枯葉となって遠くに飛んで行く
明日が今日となり、読みさしの本が、遅々と進まないのに、一日経つと完全な過去となり、
もう記憶が90%以上消去されている
近くの記憶が殆んど空白で、むしろ遠い遠い幼日の記憶の方が鮮明である
記憶のパラドックスである
これは、アルツハイマーの前兆かと一瞬ドキリとするが、我に返って冷静に考えると昔か
ら私の記憶パターンで、安心する
一生の時間が弧を描いて現在地と年数のヒモ端で結ばれているようである。
対して記憶は快速電車が次々にやりすごす駅のよう、遠い時間程、記憶が濃淡を増す
快速電車の最後尾で見る、線路の枕木現象である
未だ理解していないアインシュタインの相対性原理を記憶と時間で教わっているようであ
る、
兎に角、時間が私の進行と合わないのか、私が時間に合わせられないのか、時々ギャプを
感じるのである
そんなことをアレコレ思いながら窓外に目を転じると、何時の間にやら湊川のドウダン・
ツツジが、色づいている
その細かな葉色は、黄色とオレンジと赤が鮮やかさを増し、モンゴル草原の、はにかんだ
少女の頬のように色づいている
陽の光が川面で、緩やかな波紋と遊び、キラキラと水の精を生んでいる
眩い水の精が川面で祈りを捧げ、厳粛な光の十字を切っている
まどろいながら、光の妖精を見ていると自分には言葉が無い事が良く分かる
光と水の織りなすファンタジーに見とれていると、失語症に陥る
今朝もアキもせずパソコンに向かい原稿を打ち込んでいる
色んな本を読んでいると、自分の文章が如何に文学的でないかが良く分かる
若い頃、文学書を殆んど読んでいない事が祟っている
多感な青春時代に華麗な文章に触れておけば良かったと悔やまれてならない
これも女性とマージャンが邪魔した
責任転換は私の生来の特技である
振り返って生きるため生活の為に読んで来た書物ばかりで、リアルなノンフィクションが
殆んどであった
間違いなく花より団子派であるが、中味はお粗末な粗食派である
とりとめない言語が、私の脳内宇宙のどこかにある吹き出口、ホワイトホールから噴出す
そんな時、嫌がるパソコンを真夜中から叩き起こす
失語症はきっとパソコンが、せめて5時間は寝かせて欲しいと拒否反応をしているせいで
はないかと思う時がある
今朝もパソコンは私と同じく顔も洗っていない
いやパソコンは私の一日三箱半のタバコのヤニで、顔面が黄色くなっている
このパソコンは5年程使っている
日本タバコ産業株式会社に言ってやりたい
癌にも脳梗塞にも侵されず、健康そのものである
このタフで健康そのものの、某社の製品はさすがと感心しきりである
最早、このパソコン君は、私の同志であり戦友である
長く使ったせいで、文字盤が固まった指の垢でいたるところ、分かりにくくなっている
拭いてもだめで、爪の先でゴリゴリ削り取るのである
出合った相手が悪かった
私にとって唯一の近代兵器である
戦国時代の種子島である
そんな同志パソコン君と対峙しながら見るとは無しに半開きのカーテンの間から窓外を見
る
すると川向かいの見上げる程の市民会館が、視界の七割近くを占領し、いつも私の思考の
広がりを阻んでいる
センスも何も無い無粋なコンクリートの壁である
しかも建物は無神経に何十年も私に背を向けて建っている。
精神衛生に良い建物とは到底言い難い
私が文学的才能を伸ばせないのは、殆んどこの建物の所為ではないかと、思っている
これでは、上昇志向・楽天思考の私には、まったく不利である
そこで我田引水思考の私は、この建物は北朝鮮からのミサイルの盾、また奈良の大仏なら
ぬ、有り難い氷見大仏の巨大な背中と言い聞かせている
そう思えば、市当局に対する不満が、かなり和らげられる
兎に角無粋な壁であるが、それでも、首を20度、ホンの少し左右に振れば、秋の兆候が
確実に飛び込んでくる
秋は赤と黄色を織り交ぜた多彩な色を空色のキャンパスに加えつつ確実に進行しているの
に、「寶」の歴史は動かない
天が実現不可能な恋をからかっているのではと思う程である
そうイングリット・バーグマンや、オードリーに恋した青春が懐かしい
誇大妄想狂の傾向があることは、かなり意識している
むむむむむむむむむむむむむむむむむむ
HPを全部読むと、がんばっているメ○ちゃんを、引き離す為、今朝も支離滅裂な原稿を
打ち込んでいる
東平蔵の車の音がした
もう直ぐ、平蔵の大敵、冬将軍が攻めてくる。
朝夕の 冷え込みが確実にそれを教えてくれる
そして紅葉が破れた恋のように落葉し、秋の哀れを誘う
何を言いたいのか話したいのか万華鏡の今日この頃である
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これも最期のあがきと自覚しているから、まだボケてはいない
腹が空いた
そろそろ朝飯にするか