行商先からの贈り物

 

父親は当初、かなり手広い炭屋を営んでいた

その炭屋を廃業して行商に身を転じた

何かの時に何故止めたのか聞いたら、プロパンは爆発するから止めたと云う

     ・・・・・・・そんなアホな

本当の話である

そう、父親は極度の怖がり、内心は気の小さい臆病な人であった

今になって考えると、それで良かったと思えるようになった

それはさておいて、行商先からは、箱に詰めた林檎が送られてきたことがあった

美空ひばりの「赤い林檎に〜唇よせて」が流行った時代である

青森の林檎農家を回っていたのであろう

それから北海道の干した昆布が箱一杯に送られてきたこともあった

遠いところまで行っていたのである

振り返って思うに、正直真面目な父親であったと、思わずにはおれない

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平成2215