「寶」との遭遇
話を戻す
不動産と古美術の世界を並走して翁の家にも再三足を運んでいたある日、私は遂に「寶」
と遭遇したのである
その日は障子戸から柔らかな日差しが差し込む暖かい日であった
翁はその日はとても機嫌が良かったのであった
何年間も誰にも見せた事が無い門外不出の「寶」を倉庫から出して床の間に飾っていたの
であった
衝撃的出会いであった
その時の、「寶」の印象はこの後の「不思議な力」で話すのでここでは置くとして、
この日以来3年間程、その獅子印「寶」は私の脳裏から消えなかった
翁の中で手に入れたかった品は2点、中国の「瑠璃の壷」と獅子印「寶」であった
翁には60才近い娘さんがお一人でしかも結婚しておられなかった
翁も80才に近かった
亡くなられた時は90才を超えていたと記憶している
翁にその間100万の抹茶茶碗その他数点を分けていただいていた
その間の出費は翁への授業料の意味と密かに狙っていたその二点のためであった
二つの品は「寶」本にも記してある
翁はこの二つの品を手に入れるとき、それまで集めた殆どの骨董品を処分して更に親戚か
らお金を借り集めて手に入れたと言う
いわば翁の命とも言える宝であった
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「寶」を譲っていただく前一度翁は病に倒れられた
私が「寶」を解明執筆したのが平成12年9月である
「寶」本と愛知万博森局長のお手紙を翁の棺に入れたのであるから12年の年暮れ入滅で
あろう
親戚も少なく、通夜葬儀全て内輪の人間として取り仕切った
遡ると本の執筆に7年であるから、翁はその頃82才頃であろう
多少記憶に誤差があるかも知れない
翁は自分の余命と、残された宝物の行方を案じておられたのである
妻に家業と一家の全てのお金を任せていた
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今思えば痛恨の念であった
妻の頭のレベルで分かる筈も無い
渋る妻に何としても手に入れたいと迫った
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金額は言わない
二つ一緒に破格の安さで分けて戴いた
奥さんと娘さんと親族会議をして分けて戴いたのである
金額でなく翁の命、まさに命脈を託していただいたのである
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その内の1つ「瑠璃の壷」を妻は持ち去った
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