「寶」への道  （二）

   振り返って思うに、この世紀の大発見である神器・太極「寶」解明には

幾つかの条件を有している人でなくては無理であったろう。

第一の条件として、この中国皇帝が製作を命じた神器「寶」が目の前に

あっても、まず陶磁器に興味がなければ、猫に小判、いや千両箱です。

第二の条件として、興味があったとしても、観賞眼の目線が低ければ、

やはり目の前から通り過ぎたであろう。

本書を読み終えればお分かり戴ける筈ですが「寶」発見は漢文化における

二十世紀最大の発見です。

「寶」解明は天命であったろうと考えるのです。

その天命を拝命(はいめい)するには以下の条件が備わっていなくてはなりません。

その有資格者の条件とは

�@     人並以上の欲望

�A     人並以上の好奇心

�B     人並以上の執念

�C     人並以上の体力

（最低１０年間３６５日、平均睡眠時間３時間３０分前後に耐えうる体力）

�D 人並以上、いや日本で指折る馬鹿かアホである事

（まず秀才では、こんな無謀(むぼう)は冒(おか)しません）

�E 人並以上の非常識人間である事

（常識人間では「寶」は観えません）

 　　以上の条件は最低限の条件です。

しかし「寶」解明には更に次の条件が加わります。

�F「寶」解明執筆には陶磁器の全体的知識が多少必要です。

�Gある程度の中国史の知識を持ち合わせなくてはなりません。

幸運な事に私は３０代前半、中国の歴史本を結構読んでいました。

司馬遷(しばせん)の史記(しき)や十八史(じゅうはちし)略(りゃく)、老子(ろうし)、荘子(そうし)、荀子(じゅんし)、

韓非子(かんびし)その他を舐(な)めていたのです。

また、中国文明の根幹「易(えき)」は避けて通れない難関です。

本業の不動産業に入る前年、東京で数ヶ月間“易者”をしていたのです。

�H当然、多少の読書家である事

私は雑本ですが、小説以外広範な領域の本を舐めていました。

但し私の場合咀嚼(そしゃく)して読んだのではない、上っ面を“舐めた”のです。

また「寶」には現代科学に暗合(あんごう)する中国道教の果てしない宇宙が広がります。

現代宇宙科学にも多少興味がなくてはなりません。

加えて

�I １０年間無収入に耐える蓄(たくわ)えか、その備えが必要です。

�J「寶」解明の協力者が出現する幸運にも恵まれなければなりません。

�K　決定的な事は「寶」と遭遇(そうぐう)しなくてはなりません。

エジプトの王家の墓を探し当てた某先生は大学教授で経済的基盤もあり協力スタッフ

もいたであろう。

私は孤立無援、全て“自灯明(じとうみょう)”を強いられた。

「寶」遭遇時は日本中がバブル期であった、「寶」解明に突入する頃は、バブル期に

赤信号が点滅した頃でした。

その二年程前に、私は「寶」の吉田翁と運命の出会いをするのです

                　　　　　　　　　　　平成19年2月28日